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建設業の雇用契約書で必須の特殊事項
建設業の雇用契約書には、一般的な雇用契約書に加えて現場労働特有の手当・就業条件を明記する必要があります。曖昧なままにしておくと、手当の不支給トラブルや残業代計算のベースとなる賃金額を巡る紛争に発展しやすい業種です。
以下の5つの特殊事項を雇用契約書または別紙規程で明確化しておくことが重要です。
現場手当(現場ごとの加算)
建設現場での就業に対して支給される手当です。現場の規模・危険度・遠隔度に応じて金額が変わる場合は、「別途定める現場手当規程による」と雇用契約書に記載し、規程を別途整備します。
- 金額が固定の場合: 「現場手当 月額〇〇円」と明記
- 現場ごとに変動する場合: 「現場手当規程に基づき支給する」と記載し、規程本文を整備
- 残業代計算の基礎賃金に現場手当を含める・含めないかを明示(含めない場合は法令上の除外要件を満たすか要確認)
通勤手当(直行直帰の取扱い)
建設業では現場が変わるたびに通勤経路・距離が変動します。直行直帰(自宅から現場へ直接出勤・現場から直接帰宅)の場合、通勤手当の計算方法を事前に合意しておかないとトラブルの原因になります。
- 実費精算の場合: 最短経路の交通費を支給する旨と、申請方法(領収書・IC乗車履歴等)を明記
- 上限設定の場合: 「月額〇〇円を上限とする」と明記
- 直行直帰時の取扱い: 「現場最寄り駅からの交通費を実費支給する」等を具体的に規定
出張手当(遠隔現場)
宿泊を伴う遠隔現場への出張について、手当の内容を雇用契約書または出張旅費規程で定めます。
- 宿泊費: 実費精算か定額(例: 1泊〇〇円)かを明示
- 日当: 遠隔地での割増賃金として「1日あたり〇〇円」を定める場合の根拠
- 家族帯同の可否・単身赴任手当の有無
特殊作業手当(高所・地下・重機・夜間)
危険度・負荷の高い作業への従事に対して支給する手当です。種類と金額の目安を明記することで、採用時の条件明示と残業代計算のベース確定が同時に達成されます。
| 手当の種類 | 支給条件の例 | 金額の目安(参考) |
|---|---|---|
| 高所作業手当 | 地上10m以上の高所での作業に従事した日 | 1日あたり500〜2,000円程度 |
| 地下・トンネル作業手当 | トンネル内・地下構造物内での作業に従事した日 | 1日あたり1,000〜3,000円程度 |
| 夜間工事手当 | 22時〜5時の夜間帯に工事作業に従事した日 | 1日あたり2,000〜5,000円程度(深夜割増とは別に加算) |
| 重機操作手当 | クレーン・ショベル等の重機を操作した日 | 1日あたり500〜2,000円程度 |
| 粉塵・有害物質作業手当 | 石綿・粉塵・有害化学物質の処理作業に従事した日 | 1日あたり1,000〜3,000円程度 |
上記の金額は一般的な参考水準です。実際の支給額は各社の賃金規程に基づいて定める必要があります。手当の設定にあたっては労働法専門の社労士または弁護士への確認を推奨します。
安全衛生教育の受講記録欄
雇用契約書の別添として安全衛生教育受講確認書を添付し、労働者の署名を取得することが実務上の標準です。労働安全衛生法59条に基づく教育実施の証跡となり、労災発生時の安全配慮義務履行の立証に使えます。本テンプレートには受講確認欄を添付書式として収録しています。
建設業法・労働安全衛生法対応条項
一人親方との区別(労働者性の判定)
建設業では「一人親方」として業務委託契約を結んでいるが、実態は雇用と同じ」という偽装請負が多発しています。労働基準監督署の調査で「労働者性あり」と判断された場合、過去2〜3年分の残業代・社会保険料の遡及負担が発生します。
| 判断項目 | 労働者(雇用契約) | 一人親方(業務委託) |
|---|---|---|
| 作業時間の指定 | 会社が指定 | 本人が決める |
| 作業場所の指定 | 会社が指定(現場を指定) | 本人が独立して判断 |
| 道具・材料の負担 | 会社が負担 | 本人が調達・負担 |
| 報酬の性質 | 時間・日数に応じた賃金 | 成果物・工事完成に応じた請負代金 |
| 他社への就業 | 原則制限あり | 複数の発注者から受注可能 |
一人親方への発注は必ず業務委託契約書で締結し、上記の「業務委託の実態」を契約書と日常の運用で一致させることが重要です。
元請・下請の労働条件明示義務
建設業法24条の2に基づき、元請事業者は下請の工事従事者の労働条件に関して安全衛生の確保義務を負います。また、直接雇用する労働者への労働条件の書面明示(労働基準法15条)は、元請・下請いずれの立場でも必須です。
- 下請に仕事を出す際に不当に低い請負代金を強制することは建設業法19条の3違反
- 下請の労働者が被災した場合、元請にも安全配慮義務違反が問われる可能性あり
- 施工体制台帳・労働者名簿の整備が義務(特定建設業者)
労働安全衛生法59条(安全衛生教育)
事業者は新規雇用時・作業内容変更時に必ず安全衛生教育を実施しなければなりません(労安衛法59条1項・2項)。建設業では特に以下の教育が求められます。
- 雇い入れ時教育: 機械・設備の危険、爆発・火災防止、安全作業手順等(6項目以上)
- 作業変更時教育: 新しい作業内容・機械・化学物質の取扱い
- 特別教育: 高所作業・クレーン運転・玉掛け等、法令が定める危険業務
- 職長教育: 班長・職長に就任する際の安全衛生に関する教育(建設業は義務)
建設業の労務トラブル、専門弁護士に無料相談
建設業の雇用契約・一人親方の偽装請負・未払い残業代は建設業労務に強い弁護士への相談が最短解決ルートです。労働問題専門の弁護士への初回無料相談で、自社の契約書リスクを診断できます。
- 初回相談無料・全国対応
- 偽装請負リスク診断と是正アドバイス
- 未払い残業代・元請への立替請求サポート
- 建設業法違反・行政処分リスクの評価
建設業特有の労働時間ルール
2024年4月から建設業も時間外労働上限規制の対象
2024年4月1日より、建設業への時間外労働の上限規制(労働基準法36条)の適用が開始されました。5年間の猶予期間が終了し、一般事業と同様のルールが適用されています。
| 区分 | 上限時間 | 違反時の罰則 |
|---|---|---|
| 通常時(36協定の原則限度) | 月45時間・年360時間 | 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金 |
| 特別条項(繁忙期等・特別の事情) | 月100時間未満(休日労働含む)・年720時間以内・2〜6ヶ月平均80時間以内 | 同上 |
ただし、以下の工事は2024年4月以降も特例として一部緩和があります。
- 災害復旧・復興工事: 月100時間未満・2〜6ヶ月平均80時間以内のルールを適用しない
- 注: 年720時間・月45時間超は年6回以内のルールは適用あり
36協定特別条項の記載例
建設業の36協定では特別の事情(臨時的な業務量増加)を具体的に記載する必要があります。
- 特別の事情の例: 「工期集中による突貫工事」「天候不良による工程遅れの挽回」「官公庁工事の年度末集中対応」
- 「業務繁忙」「顧客の要請」等の抽象的な記載では、労働基準監督署の調査で指導対象となる可能性があります
- 特別条項の発動は年6回(6ヶ月)を上限とする必要があります
災害復旧時の特例
台風・地震等の自然災害後の復旧・復興工事では、月100時間未満・2〜6ヶ月平均80時間以内のルールが適用されません(労基法36条11項)。ただし適用にあたっては「災害復旧・復興の事業である」ことを36協定に明記し、適用の都度記録を残しておくことが重要です。
建設業の固定残業代・休日出勤手当の妥当性を確認
建設業では現場手当・特殊作業手当が残業代計算の基礎賃金に含まれるか否かで支払額が大きく変わります。実際の残業代が適正かどうかを確認できます。
残業代を計算する現場手当・特殊作業手当の設定例
建設業の現場手当・特殊作業手当は、残業代計算の「基礎賃金」に含めるかどうかを明確にしておくことが最重要です。以下の手当は労働基準法37条4項・施行規則21条の要件を満たす場合に限り、割増賃金の基礎から除外できます。
| 手当の種類 | 支給条件の目安 | 月額の参考レンジ | 残業代基礎からの除外 |
|---|---|---|---|
| 一般現場手当 | 社外の建設現場での就業日 | 月10,000〜30,000円程度 | 原則含める必要あり(要確認) |
| 遠隔現場手当 | 自宅から片道2時間超の現場 | 月20,000〜50,000円程度 | 通勤手当的性質なら除外可の場合あり |
| 夜間工事手当 | 22時〜5時の夜間帯での作業日 | 1日2,000〜5,000円 | 深夜割増(25%)は別途必要 |
| 高所作業手当 | 地上10m以上での作業日 | 1日500〜2,000円 | 特殊作業性を明示すれば除外可の場合あり |
| トンネル・地下作業手当 | 坑内・トンネル内での作業日 | 1日1,000〜3,000円 | 同上 |
手当が「残業代基礎から除外できる」かどうかは支給要件が明確か・恣意的な支給でないか等の要件を満たす必要があります。設定にあたっては社会保険労務士または弁護士への確認を推奨します。
残業代を計算してから、未払いがないか確認を
建設業では夜間手当・高所手当が残業代の計算基礎に含まれず、残業代が過少払いになっているケースが多く確認されています。残業代弁護士への相談で、請求可能額の概算を無料で診断できます。
- 初回相談無料・着手金ゼロの成功報酬型も対応
- 過去3年分の未払い残業代を遡及請求可能
- タイムカード・シフト表から証拠収集をサポート
正社員・契約社員・職人(一人親方)の使い分け
雇用契約書 vs 業務委託契約書(偽装請負リスク)
建設業で最も多い法令違反リスクが「一人親方への偽装請負」です。形式が業務委託(請負)であっても、実態が雇用であれば労働基準法が適用されます。
| 雇用形態 | 締結すべき契約 | 社会保険 | 残業代 |
|---|---|---|---|
| 正社員(職長・施工管理等) | 雇用契約書 | 健保・厚年・雇用保険加入必須 | 支払い義務あり |
| 契約社員(期間工・現場要員) | 雇用契約書(有期) | 週20h以上なら加入義務 | 支払い義務あり |
| 一人親方(独立した職人) | 業務委託契約書 | 加入義務なし(本人が国保・国年) | 支払い義務なし |
一人親方は雇用契約NGの理由
一人親方と雇用契約書を結ぶことは労働実態に反する可能性があります。また、一人親方に時間・場所・作業方法を細かく指示する運用をしつつ業務委託契約書を使うことも、偽装請負として摘発されます。
- 偽装請負認定で会社が負う義務: 過去2〜3年分の残業代、社会保険料(会社負担分)、有給休暇の付与
- 是正指導を受けると、元請への報告義務が生じ、建設業許可の更新に影響するケースもある
- 一人親方との取引は必ず業務委託契約書を締結し、指揮命令を与えない運用を徹底する