
借用書の役割と法的効力
借用書とは、金銭その他の物品を借りた事実と返済条件を記録した私文書です。民法第587条(金銭消費貸借契約)を根拠として、当事者間の合意内容を証拠化する機能を持ちます。
口頭での貸し借りも法律上は成立しますが、後日「そんな約束はしていない」「金額が違う」というトラブルに発展しやすいため、1万円以上の貸借では必ず書面化することが重要です。
民法第587条(金銭消費貸借)の根拠
民法第587条 は「消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還することを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる」と規定しています。借用書はこの契約の内容を記録する書面であり、裁判において契約の存在と条件を証明する重要な証拠となります。
2020年4月の民法改正により、書面で契約をする場合は金銭等の交付前でも契約が成立する「諾成的消費貸借」(民法587条の2)が新設されました。これにより、書面化した借用書は金銭交付前であっても契約として効力を持ちます。
借用書・念書・公正証書・金銭消費貸借契約書の比較
| 書類の種類 | 作成者 | 強制執行力 | 主な用途 | 費用目安 |
|---|---|---|---|---|
| 借用書 | 借主(私文書) | なし | 金銭消費貸借の記録・証拠化 | 無料(印紙税別) |
| 念書 | 当事者(私文書) | なし | 支払い約束・誓約の確認 | 無料 |
| 公正証書 | 公証人(公文書) | あり(認諾文言付き) | 確実な債権担保・強制執行準備 | 5,000〜数万円 |
| 金銭消費貸借契約書 | 当事者双方(私文書) | なし | 双方署名による合意文書化 | 無料(印紙税別) |
借用書は借主のみが署名する一方的な書面であるのに対し、金銭消費貸借契約書は貸主・借主の双方が署名する双務的な文書です。どちらも証拠力は同等ですが、トラブル防止の観点からは双方署名の契約書形式が確実です。
借用書の必須7条項
法的証拠として有効な借用書を作成するために、以下の7つの条項を必ず記載してください。1つでも欠けると「金額が違う」「返済期日は別に合意していた」という争いが生じるリスクがあります。
条項1:借用金額(漢数字または改ざん防止表記)
金額の改ざんを防ぐため、数字と漢数字を併記するのが基本です。
- 記載例:金500,000円(金五拾万円也)
- 数字に「壱・弐・参・拾・百・千・万」の旧字体を使うとより改ざんが困難になります
- 金額は「也」で締めくくることで追記を防止します
- 外貨での貸借は為替換算基準日と通貨を明記してください
条項2:返済期日・方法(一括または分割)
- 一括返済:「〇〇〇〇年〇月〇日までに一括返済する」
- 分割返済:毎月の返済日・各回の金額・返済回数・最終回の金額を一覧で記載
- 返済方法:銀行振込の場合は受取口座情報(金融機関名・支店名・口座種別・口座番号・口座名義)を記載
- 振込手数料の負担者も明記しておくと後のトラブルを防げます
条項3:利息(利息制限法の上限以内)
利息制限法1条 により、貸付金額に応じた上限利率を超える約定は超過部分が無効となります。
| 元本金額 | 利息制限法の上限利率 | 注意点 |
|---|---|---|
| 10万円未満 | 年20% | 超過部分は無効 |
| 10万円以上100万円未満 | 年18% | 超過部分は無効 |
| 100万円以上 | 年15% | 超過部分は無効 |
利息を定めない場合は無利息の貸借となります。家族間で無利息とする場合は後述の贈与税リスクに注意してください。
条項4:遅延損害金(年14.6%が目安)
返済期日を過ぎた場合に発生する損害金です。消費者金融と異なり個人間貸借には上限規制がありませんが、年14.6%(法定遅延損害金率)を目安に設定するのが一般的です。「支払い期日の翌日から完済まで年14.6%の遅延損害金を支払う」と記載します。
条項5:期限の利益喪失
分割返済を設定した場合に必須の条項です。「1回でも支払いを怠った場合は、残元利金全額について期限の利益を失い、直ちに一括返済する」という内容を記載します。この条項がないと、毎回の分割返済について個別に督促する必要が生じます。
条項6:連帯保証
連帯保証人を立てる場合は、保証人の住所・氏名・自署・押印を借用書に記載します。
- 連帯保証契約は書面がなければ無効です( 民法446条2項 )
- 保証人は借主が返済できない場合に全額の支払い義務を負います
- 個人根保証の場合は極度額の設定が必須です( 民法465条の2 。2020年4月施行)。極度額を定めない個人根保証契約は無効となります
- 事業のための債務を主債務とする個人保証は、公証役場での保証意思宣明公正証書の作成が必要(民法465条の6)
条項7:公正証書化への協力
「貸主の請求があった場合、本借用書の内容を公正証書にすることに協力する。公正証書作成に要する費用は借主が負担する」という条項を入れておくと、後から公正証書化を拒否されるリスクを回避できます。
印紙税法に基づく収入印紙(重要)
借用書は印紙税法上の「課税文書(第1号の3文書:消費貸借に関する契約書)」に該当し、借用金額が1万円以上の場合は収入印紙の貼付が必要です。収入印紙を貼らなくても借用書の法的効力は失われませんが、印紙税の過怠税(本来の3倍)が課されるリスクがあります。
金額別の収入印紙額一覧
| 借用金額 | 収入印紙の金額 |
|---|---|
| 1万円以上10万円以下 | 200円 |
| 10万円超50万円以下 | 400円 |
| 50万円超100万円以下 | 1,000円 |
| 100万円超500万円以下 | 2,000円 |
| 500万円超1,000万円以下 | 10,000円 |
| 1,000万円超5,000万円以下 | 20,000円 |
貼付・消印のルール
- 貼付箇所:文書の余白部分(日付欄付近が慣例)に貼付します
- 消印:収入印紙と文書にまたがって、作成者の印鑑または署名で消印します。消印をしない場合は印紙税法違反(過怠税の対象)となります
- 再利用禁止:消印済みの収入印紙は再使用できません
- 電子文書の例外:電子署名を用いた電磁的記録の場合は課税文書に該当しない可能性があります。詳細は税務署にご確認ください
家族間の借用書(最重要:贈与税対策)
親子・兄弟・夫婦間での金銭の貸し借りであっても、借用書を作成しなかった場合や返済実態がない場合は税務署から贈与とみなされ、贈与税が課される可能性があります。年間110万円を超える贈与には贈与税が発生するため、高額の親族間貸借は特に注意が必要です。
贈与税認定リスクを避けるための4つのポイント
- ポイント1:借用書を必ず作成する — 貸借関係の存在を証明するために、借入日・金額・返済期日・利息を記載した借用書を取り交わします
- ポイント2:毎月の返済を銀行振込で行う — 現金手渡しではなく銀行振込で返済し、通帳・振込明細で返済実績を残します。税務調査では返済の実態が最も重視されます
- ポイント3:利息を設定する(低利でも可) — 完全な無利息は「利息相当額の贈与」とみなされるリスクがあります。低利(0.1〜2%程度)での設定が現実的です
- ポイント4:返済能力の範囲内の金額にする — 借主の収入・資産からみて明らかに返済不可能な金額の貸借は、最初から贈与意図があるとみなされます。借主の収入に見合った返済計画を設定してください
親子間での住宅購入資金借用の注意点
子が親から住宅購入資金を借りるケースは税務署が特に注目するパターンです。借用書の作成・返済の実態・利息の設定という3点を整えることで贈与認定リスクを低減できます。不安がある場合は税理士・弁護士への事前相談をお勧めします。
個人間借用書の書き方(友人・知人間)
友人間・知人間の金銭貸借は、関係性への配慮から書面化を躊躇いがちですが、書面化しないことで関係が壊れるリスクの方が高いという点を意識してください。「念のため書面を残しておこう」という形で自然に提案することで、相手への不信感を与えずに借用書を作成できます。
関係を壊さないための文面の工夫
- 「お互いのために記録しておこう」という表現で提案する
- 金額・期日を双方で確認してから記載する(一方的に作成しない)
- 利息は設定しないか、最低限(0.1〜1%)にとどめることで「商売」のイメージを避ける
- 返済が困難な場合の話し合い条項(「事情が変わった場合は協議する」)を入れることで柔軟性を持たせる
連帯保証人の扱い
友人間の貸借で第三者の連帯保証人を求めることは関係性上難しい場合があります。保証人を立てる代わりに、公正証書化(強制執行認諾文言付き)を検討することで、裁判なしに強制執行が可能な状態にできます。保証人よりも手続きが明確で、相手も理解しやすい手段です。
物品借用書(自動車・家電・備品など)
金銭以外の物品を貸し借りする場合も、物品借用書を作成することで返却トラブルを防止できます。特に自動車・電子機器・高額備品の貸借では、損傷・紛失時の責任範囲を明確にしておくことが重要です。
物品借用書に記載すべき事項
- 物品の特定:品名・型番・シリアル番号・色・製造年など特定できる情報を記載
- 評価額の記載:紛失・毀損時の弁償金額の基準として、貸し出し時点の評価額を記載する
- 返却期限:具体的な日付を記載。延長する場合は書面または電磁的記録で合意する
- 返却条件:「原状回復して返却する」「通常の使用による消耗は除く」など返却時の状態を定める
- 損傷・紛失時の取扱い:「損傷・紛失した場合は評価額相当の賠償を行う」と明記する
- 第三者への転貸禁止:「貸主の書面による承諾なく第三者に転貸しない」という条項を入れる
自動車の物品借用書の特記事項
- 自動車保険の適用範囲(運転者年齢条件・使用目的)を貸主が事前に確認する
- 走行距離・燃料残量・傷の有無を貸し出し時に記録する(写真撮影推奨)
- 交通違反・駐車違反の責任は借主が負うことを明記する
コンビニ印刷向けA4書式(スマホでも作成可)
当サイトのPDFテンプレートはA4サイズで設計されており、スマホからダウンロードしてそのままコンビニのマルチコピー機で印刷できます。手書き記入欄も設けているため、プリンターがない環境でも利用できます。
セブン-イレブンでのコンビニ印刷手順
- セブン-イレブンのマルチコピー機を選択
- 「プリント」・「スマートフォンからプリント」を選択
- ネットプリントアプリ(無料)をスマホにインストール
- アプリからPDFを登録すると予約番号が発行される
- コピー機に予約番号を入力して印刷(白黒20円、カラー60円)
ファミリーマート・ローソンでのコンビニ印刷手順
- ファミリーマート・ローソンはFujixeroxのマルチコピー機を使用
- 「PrintSmash」アプリ(無料)またはUSBメモリからの印刷が可能
- Wi-Fi接続でスマホから直接印刷できます(A4白黒20円)
Word版とPDF版の使い分け
| 形式 | 向いているケース | 編集の可否 | 印刷の手軽さ | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| Word(.docx) | 金額・名前・期日を自由に変更したい | 全項目編集可 | PCからそのまま印刷 | Microsoft Word またはGoogle ドキュメントが必要 |
| PDF(印刷用) | すぐ印刷して手書きで記入したい | 不可(印刷後に手書き) | スマホからコンビニ印刷が最速 | 金額・日付は手書きで記入する |
急いで借用書を作成する場合はPDF版をコンビニ印刷してその場で記入する方法が最も手軽です。時間がある場合はWord版で必要事項を入力してから印刷する方法が改ざん防止の観点から優れています。
公正証書化のメリット(強制執行認諾)
借用書の内容を公正証書にすることで、裁判なしに直接強制執行が可能な「最強の債権保全手段」になります。相手が支払いを拒否した場合、公正証書があれば判決を待たずに預金・給与・不動産の差し押さえに進めます。
公証役場での手続き
- 事前予約:最寄りの公証役場に電話で事前相談・予約(日本公証人連合会ウェブサイトで検索可能)
- 必要書類:当事者全員の身分証明書・印鑑(認印可)・借用書の原案
- 当日の流れ:公証人が内容を確認・双方が署名押印・公正証書が交付される
- 代理人利用:弁護士・行政書士に代理を依頼することも可能(委任状が必要)。委任状テンプレートもご利用ください
費用の目安
| 債権額(目的価額) | 公証人手数料 |
|---|---|
| 100万円以下 | 5,000円 |
| 200万円以下 | 7,000円 |
| 500万円以下 | 11,000円 |
| 1,000万円以下 | 17,000円 |
| 3,000万円以下 | 23,000円 |
上記に加えて正書料・謄本料(各250円×ページ数)が加算されます。最寄りの公証役場への事前確認を推奨します。
強制執行認諾文言とは
「債務者は、本公正証書に記載された金銭債務の履行を怠ったときは、直ちに強制執行に服する旨陳述した」という文言が公正証書に記載されると、裁判所の判決なしに強制執行の申立てが可能になります。差し押さえ対象は預金口座・給与・不動産・動産などです。借用書の段階で「将来公正証書化することに協力する」という条項を入れておくと、後から相手が拒否することを防げます。
借用金が返済されない場合
返済期日を過ぎても入金がない場合は、段階的に法的措置を取ることができます。早期の行動が回収可能性を高めます。
債権回収の3ステップ
- ステップ1:内容証明郵便による督促 — 「〇月〇日までに全額を支払わない場合は法的措置を取る」と通知します。郵便局が発送事実を証明するため、「そんな催促は受けていない」という言い訳を封じられます。また、内容証明郵便の送付により、時効の完成が6ヶ月間猶予されます(民法150条)。内容証明テンプレートは内容証明テンプレート(T063)をご利用ください
- ステップ2:少額訴訟または支払督促 — 60万円以下の金銭債権は少額訴訟(1回の期日で判決が出る)を利用できます。60万円超は通常訴訟または支払督促手続きを利用します
- ステップ3:強制執行 — 確定判決または公正証書(強制執行認諾文言付き)を得たうえで、相手の預金口座・給与・不動産の差し押さえを申立てます
借用書作成前の最終チェックリスト
借用書を作成・締結する前に、以下のチェックリストで漏れがないか確認してください。1項目でも不備があると後日のトラブルにつながります。
金額・条件の最終チェック
- □ 借入金額が数字+漢数字で改ざん防止表記になっているか
- □ 返済期日が「令和○年○月○日」と特定の日付で記載されているか
- □ 返済方法(銀行振込/手渡し)と振込先口座が明記されているか
- □ 利息が利息制限法の上限以内か( 利息制限法1条 準拠)
- □ 遅延損害金(年14.6%が目安)が記載されているか
- □ 期限の利益喪失条項が入っているか(分割返済の場合)
形式・印鑑の最終チェック
- □ 1万円以上の場合、収入印紙が貼付・消印されているか( 印紙税法 )
- □ 借主の住所・氏名・押印(実印推奨)があるか
- □ 連帯保証人がいる場合、保証人の自署・押印・極度額があるか( 民法465条の2 )
- □ 公正証書化への協力条項が入っているか
- □ 借用書を借主・貸主双方で1通ずつ保管できるか(写し可)
類似書面との比較(念書・覚書・公正証書)
借用書と混同されがちな書面の違いを整理します。目的・効力・費用が異なるため、用途に応じて使い分けてください。
| 書面の種類 | 主な目的 | 署名者 | 強制執行力 | 使うべきシーン |
|---|---|---|---|---|
| 借用書 | 金銭貸借の事実と返済条件を記録 | 借主のみ | なし(私文書) | 個人間・家族間の貸借 |
| 金銭消費貸借契約書 | 双方合意の貸借契約 | 貸主・借主双方 | なし(私文書) | 事業性のある貸借・複雑な条件設定 |
| 念書 | 一方的な誓約・確認 | 当事者一方 | なし(私文書) | 支払い遅延時の追加誓約・前段階の確認 |
| 覚書 | 契約条件の補足合意 | 当事者双方 | なし(私文書) | 既存契約の変更・追加合意 |
| 公正証書(強制執行認諾文言付き) | 強制執行可能な債権担保 | 双方+公証人 | あり | 高額貸借・確実な回収を望む場合 |
返済トラブル発生時の対応フロー
返済期日を過ぎても入金がない場合、感情的な催促ではなく段階的な法的対応が回収可能性を高めます。
初動:1〜30日(支払催促)
- 第1段階:電話・メール・LINEで穏便に支払催促(1週間以内)
- 第2段階:書面による催促(普通郵便)。返済期日・金額を再提示
- 第3段階:内容証明郵便による正式催告。「○月○日までに支払わなければ法的措置を取る」と明記
- 内容証明郵便の送付により、消滅時効の完成が6ヶ月猶予される( 民法150条1項 )
中期:1〜6ヶ月(裁判手続き)
- 少額訴訟:60万円以下の金銭請求は1回の期日で判決(民事訴訟法368条)。費用は訴額の約1%
- 支払督促:簡易裁判所が督促状を送付。相手が異議申立てなければ仮執行宣言取得。費用は訴額の約0.5%
- 通常訴訟:60万円超または複雑な事案。地方裁判所(140万円超)または簡易裁判所
最終段階:強制執行
- 確定判決または公正証書(強制執行認諾文言付き)を執行証書として強制執行を申立て
- 差押え対象:預金口座・給与(毎月の可処分所得の4分の1まで)・不動産・動産
- 給与差押えは月収33万円以下の場合は4分の1、33万円超の部分は全額が差押え可能( 民事執行法152条 )
- 相手の財産が不明な場合は財産開示手続き(民事執行法196条以下)も活用可能
借用書と金銭消費貸借契約書の違いと使い分け
借用書と金銭消費貸借契約書は内容が似ていますが、作成方式・使う場面・証明力に明確な違いがあります。どちらを使うか迷った場合は、貸借金額と相手との関係性で判断してください。
主な違いの比較
| 項目 | 借用書 | 金銭消費貸借契約書 |
|---|---|---|
| 作成者 | 借主のみ(1通) | 貸主・借主の双方(各1通) |
| 署名・押印 | 借主のみ | 貸主・借主の双方 |
| 証明力 | 借主が債務を認めた証拠 | 双方が合意した内容の証拠 |
| 向いているケース | 家族・友人間の少額〜中額の貸借 | 複雑な条件・事業関連・高額貸借 |
| 収入印紙 | 1通に貼付(1万円以上) | 2通それぞれに貼付(1万円以上) |
| 作成の手軽さ | 借主だけが書けばよい | 双方が揃う必要あり |
個人間の少額〜中額の貸借では、作成が手軽な借用書で十分な場合がほとんどです。法人間・事業関連・高額の貸借では、双方の合意内容が明確に記録される金銭消費貸借契約書の形式が推奨されます。
利息・遅延損害金の上限と計算方法(実例つき)
借用書を作成する際に特につまずきやすい「利息」と「遅延損害金」について、法律上の上限と実際の計算方法を解説します。
利息制限法の上限利率と遅延損害金の上限
| 元本金額 | 利息の上限利率(年) | 遅延損害金の上限(年) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 10万円未満 | 20% | 29.2%(20%×1.46) | 超過部分は無効 |
| 10万円以上100万円未満 | 18% | 26.28%(18%×1.46) | 超過部分は無効 |
| 100万円以上 | 15% | 21.9%(15%×1.46) | 超過部分は無効 |
遅延損害金の上限は 利息制限法4条1項 により「利息の上限利率×1.46倍」と定められています。なお、当事者間で遅延損害金の定めがない場合は、民法419条・法定利率(年3%・2020年4月改正以後は変動制)が適用されます。
利息の計算例
元本100万円・年利15%・返済期間12ヶ月の場合の利息総額:
- 単利計算:100万円 × 15% × (12/12) = 150,000円
- 毎月の元利均等返済額:約90,258円(毎月の計算は計算ツールを利用するとより正確)
- 返済総額:約1,083,096円(利息分 83,096円)
実際の月次返済額は元利均等返済方式で計算するのが一般的です。利息計算ツール(keisan-navi.jp)を使うと、元本・利率・返済期間を入力するだけで毎月の返済額・総利息額を自動計算できます。
遅延損害金の計算例
元本50万円・遅延損害金年14.6%・30日延滞の場合:
- 計算式:500,000円 × 14.6% ÷ 365日 × 30日
- 遅延損害金:6,000円
返済が長期化するほど遅延損害金が積み上がります。早期解決が双方にとって有利です。
連帯保証人を付ける場合の注意点(2020年民法改正対応)
2020年4月施行の民法改正により、連帯保証契約のルールが大幅に変わりました。改正前の慣行を踏襲すると契約が無効になるリスクがあります。最新ルールを確認してください。
2020年民法改正による主な変更点
- 個人根保証契約の極度額設定が必須:根保証(継続的な債務を包括的に保証する契約)で個人が保証人になる場合、「極度額」(保証の上限金額)を書面で定めなければ無効となります( 民法465条の2 )。借用書に「保証人の保証限度額:金○○円」と明記してください
- 情報提供義務の新設:事業のための借入に個人が保証人になる場合、借主は保証人になろうとする人に対して財産・収支状況・他の債務の状況を説明しなければなりません(民法465条の10)
- 事業融資の個人保証に公正証書が必要:主たる債務が「事業融資」の場合、法人の代表取締役・共同事業者等以外の個人が保証人になる際は、契約締結の1ヶ月前以内に公証役場で「保証意思宣明公正証書」を作成しなければ保証契約が無効となります(民法465条の6)
連帯保証人と単純保証人の違い
| 項目 | 連帯保証人 | 単純保証人(保証人) |
|---|---|---|
| 催告の抗弁権 | なし(貸主から直接請求を受ける) | あり(まず借主に請求するよう主張できる) |
| 検索の抗弁権 | なし(借主の財産を先に差し押さえるよう求められない) | あり(借主の財産を先に差し押さえるよう求められる) |
| 分別の利益 | なし(全額を請求される) | あり(保証人が複数いれば分割で負担) |
| 貸主にとっての有利さ | 非常に強力 | 弱い |
個人間貸借では連帯保証人を求めるのが一般的です。「保証人」と書くだけでは単純保証人とみなされる場合があるため、必ず「連帯保証人」と明記してください。
消滅時効と時効の中断・更新(民法2020年改正対応)
貸したお金を回収できる権利(貸金返還請求権)は、一定期間が経過すると時効により消滅します。2020年4月の民法改正で時効のルールが大きく変わりました。
改正後の消滅時効期間
| 時効の種類 | 期間 | 起算点 |
|---|---|---|
| 主観的起算点(改正後新設) | 5年 | 権利を行使できることを知った時(返済期日翌日等) |
| 客観的起算点(改正後維持) | 10年 | 権利を行使できる時(返済期日翌日等) |
返済期日が明記されている借用書では、返済期日の翌日から5年で消滅時効が完成します( 民法166条1項 )。
時効の完成猶予・更新の方法
- 催告(内容証明郵便の送付):時効完成を6ヶ月間猶予できます(民法150条)。この間に訴訟等の手続きを取ることが必要です
- 訴訟の提起・支払督促の申立て:裁判手続きを開始すると時効は更新され、裁判終了まで時効は進行しません(民法147条)
- 強制執行の申立て:強制執行手続き中は時効が更新されます(民法148条)
- 承認:借主が「返す」「分割でお願いしたい」等と口頭・書面で債務を認めた場合、その時点から時効がリセットされます(民法152条)。LINEやメールでの一言も承認と認められる場合があります
- 一部弁済:一部でも返済があれば債務の承認となり時効が更新されます
時効援用に注意
時効期間が経過しても、借主が「時効を援用します」と主張しなければ自動的には消滅しません。しかし、時効が完成している状態で借主が援用を主張すると、返済を求める権利が完全に消滅します。返済が滞ったら早期に法的措置を取ることが重要です。
借用書の保管方法と紛失・改ざん防止策
借用書は紛失・改ざんのリスクを最小化して保管することが重要です。一般的な保管上の注意点と、電子化による保全方法を解説します。
原本2通の作成と保管
- 2通作成が基本:同内容の借用書を2通作成し、貸主・借主が1通ずつ保管します。1通のみの場合は「謄本(コピー)」を作成しておきましょう
- 保管場所:重要書類として鍵のかかる場所(鍵付き引き出し・金庫)に保管することを推奨します
- 電子スキャン保存:原本をスキャンしてPDF化し、クラウドストレージ(Google Drive・Dropbox等)にバックアップを取っておくと紛失リスクを大幅に低減できます
- 保管期間:消滅時効が完成するまで(最低5年)保管します。返済完了後も最低5年間の保管を推奨します
改ざん防止のための追加措置
- 割印(契印):複数ページにまたがる場合は各ページにまたがる割印を押します。2通作成した場合は両通にまたがる割印を押すことで同一文書であることを証明できます
- 確定日付の取得:公証役場に原本を持参し「確定日付」を取得する方法があります。費用は700円で、公証人が日付を証明することで後付け・バックデートの証拠能力が強化されます
- 電子契約の活用:クラウドサイン・GMOサインなどの電子契約サービスを利用すると、署名・タイムスタンプが自動記録され、改ざんが技術的に不可能になります。収入印紙が不要になるメリットもあります
印紙税の完全早見表と節税ポイント
借用書(消費貸借に関する契約書)は印紙税法の第1号の3文書に該当します。金額に応じた収入印紙が必要です。 国税庁 印紙税額一覧 に基づく完全版の早見表を掲載します。
借用書の収入印紙 完全早見表(2026年5月28日確認)
| 借用金額 | 収入印紙の金額 | 購入場所 |
|---|---|---|
| 1万円未満 | 非課税(不要) | — |
| 1万円以上10万円以下 | 200円 | 郵便局・コンビニ・法務局等 |
| 10万円超50万円以下 | 400円 | 郵便局・コンビニ・法務局等 |
| 50万円超100万円以下 | 1,000円 | 郵便局・コンビニ・法務局等 |
| 100万円超500万円以下 | 2,000円 | 郵便局・法務局等 |
| 500万円超1,000万円以下 | 10,000円 | 郵便局・法務局等 |
| 1,000万円超5,000万円以下 | 20,000円 | 郵便局・法務局等 |
| 5,000万円超1億円以下 | 60,000円 | 郵便局・法務局等 |
| 1億円超5億円以下 | 100,000円 | 郵便局・法務局等 |
印紙税の節税ポイント
- 電子契約で印紙税ゼロ:電子署名を用いた電磁的記録の借用書(クラウドサイン・GMOサイン等)は印紙税法上の「文書」に該当しないため、収入印紙が不要です
- 2通作成時は各通に貼付:借用書を2通作成した場合は、各通に収入印紙を貼付します(計2枚分の費用が発生します)
- 収入印紙の購入場所:200〜400円の少額は郵便局・コンビニで購入可能。高額は郵便局・法務局でまとめて購入するとスムーズです
- 消印は必須:貼付した収入印紙への消印(作成者の印鑑または署名で印紙と書類にまたがって押す)を忘れると、印紙税法違反として過怠税(貼付しなかった場合と同じ)の対象となります
貸主・借主それぞれが押さえるべき注意点
借用書は貸主と借主の双方にとってリスク管理ツールです。立場によって注意すべきポイントが異なります。
貸主(お金を貸す側)の注意点
- 相手の返済能力を事前に確認する:借主の収入・資産・他の借入状況を把握してから貸し付けます。「返済できないリスク」を許容できる金額に抑えることが鉄則です
- 貸付金は銀行振込で行う:現金手渡しでは後日「もらった」「贈与だった」と言い訳される可能性があります。振込明細を証拠として残してください
- 借用書の原本を必ず保管する:借主に渡した借用書のコピーを自分の手元に保管します。借主が原本を持っている形では証明力が弱くなります
- 高額案件は公正証書化を求める:100万円を超える貸付では公正証書化(強制執行認諾文言付き)を条件にすることを検討してください
- 時効に注意する:返済期日から5年で時効消滅します。返済が滞ったら早期に法的措置を取ることが重要です
借主(お金を借りる側)の注意点
- 返済能力を超えた借入をしない:「急場しのぎ」で高額を借りると、返済できないまま遅延損害金が積み上がり、最終的に強制執行(給与差押え等)に発展します
- 返済は必ず振込で行い明細を保管する:現金手渡しで返済した場合でも「まだ返してもらっていない」と言われるリスクがあります。銀行振込で返済し、明細を保管してください
- 完済後は借用書の返還を求める:全額返済した後は、借用書の原本の返還または「受取証書」の交付を求めてください。返還された借用書は双方で破棄します
- 返済が困難になったら早期に相談する:返済期日を過ぎると遅延損害金が発生します。事情が変わった場合は早期に貸主に連絡し、返済条件の変更(覚書)について協議することが重要です。覚書テンプレートを活用してください
- 連帯保証人を立てる際は保証人に説明義務を果たす:民法465条の10により、事業融資の保証人に対しては財産・収支・他の借入状況を説明しなければなりません
借用書の関連手続きに使える書類一覧
借用書と組み合わせて活用できる書類をまとめました。貸借のライフサイクル(締結→返済変更→返済滞納→回収)に応じた書類を用意しておくことで、トラブルの予防と早期解決が図れます。
| 場面・目的 | 使うべき書類 | テンプレート |
|---|---|---|
| 貸借の証拠化(基本) | 借用書 | 本ページのテンプレートを利用 |
| 支払い遅延時の追加誓約・念押し | 念書 | 念書テンプレート(T041) |
| 返済条件の変更合意(分割への切替等) | 覚書 | 覚書テンプレート |
| 返済滞納時の正式催告 | 内容証明郵便 | 内容証明テンプレート(T063) |
| 示談・和解・合意書 | 示談書 | 示談書テンプレート |
| 公証役場への代理出頭・代理取立て | 委任状 | 委任状テンプレート(汎用) |
| 返済額の正確な計算 | 利息計算ツール | 利息計算ツール(keisan-navi.jp) |
| 月次返済額の計算 | 元利均等返済計算ツール | 元利均等返済計算(keisan-navi.jp) |
よくある質問(FAQ)
借用書なしで貸したお金を取り戻せますか?
家族間(親子・兄弟)でも収入印紙は必要ですか?
借用書に記載できる利息の上限は何パーセントですか?
公正証書化の費用はいくらかかりますか?
連帯保証人は借用書に必ず必要ですか?
借用書を電子契約で作成しても法的効力はありますか?
貸金返還請求権の消滅時効はいつ完成しますか?
借用書の作成日と実際の貸付日が違っても有効ですか?
借主が死亡した場合、借金は誰が返済しますか?
遅延損害金の上限は何パーセントですか?
口約束だけの貸し借りに証拠効力はありますか?
借用書を紛失した場合はどうすればよいですか?
家族間の貸し借りで贈与税が課税されるのはどのような場合ですか?
利息ゼロ(無利息)で貸すことに法律上の問題はありますか?
海外居住者(非居住者)への貸付でも借用書は有効ですか?
分割返済の途中で一括返済に変更できますか?
借用書の改ざんを防ぐにはどうすればよいですか?
法人間の貸し借りに借用書は使えますか?
借用書は何年間保管すればよいですか?
借用書と念書はどう違いますか?どちらを使えばよいですか?
関連テンプレート: 念書テンプレート(T041・金銭貸借・支払い誓約)・ 内容証明テンプレート(T063・債権回収・督促)・ 示談書テンプレート(金銭トラブルの和解)・ 覚書テンプレート(返済条件変更・分割合意)・ 委任状テンプレート(公証役場への代理)
参考文献・出典
本ページの内容は以下の公的情報源に基づき作成しています(2026-05-28 確認時点)。